『ボルト ねじ込み深さ』 の、お話

 

 

 

ボルトねじ込み深さ の疑問

 

ボルトのねじ込み深さはどうやって決めればいいのでしょうか?

 

 

『3ピッチ分だけ入っていれば良いよ 論』とか、『ボルト外径の1.5倍入っていれば良いよ 論』とかを耳にしますが、一体どの意見が正しいのでしょうか?またその理由は何なのでしょうか?

 

実は正解などなくて、状況に応じてボルトのねじ込み深さを決定する必要があります。しかし、上記の様に多少の意見が存在しますので、この記事ではそれぞれの意見の背景となった理由を紹介させて頂きます。

 

 

「3ピッチ入っていれば良いよ」論

 

突然ですが、ネジ部の壊れ方は以下の2種類に分けることが出来ます。

 

 

ねじ込み深さが深い場合には、ボルト自身が引っ張られて『引張破壊』が生じます。一方、ねじ込み深さが浅い場合には、メネジ部がせん断される力に耐えきれず『せん断破壊』が生じます。

 

ボルトねじ込み深さは、最低でもせん断破壊しない深さにしておけば、それ以上深くしたところでボルトの方が先に折れてしまうから、せん断破壊しない深さを ねじ込み深さにしておけば良い という意見が存在します。

 

ということで、せん断破壊しない最低の ねじ込み深さをザックリ計算してみます。

 

 

ザックリ計算によると、ボルト外径の0.4倍以上のねじ込み深さがあれば、せん断破壊しないということになります。

 

ボルト外径の0.4倍の長さは、だいたいネジ山3つ分と同じ長さです。これが「3ピッチ入っていれば良いよ論」の根拠だと推察します。

 

 

 

「ナット分入っていれば良いよ」論

 

では「ボルト外径の0.4倍の長さだけ入っていれば問題はないのか」というと、そういうわけではありません。先程紹介したザックリ計算は強さの余裕を全く加味しておりませんし、そもそもザックリ計算しただけですので。多少の安全性を考慮すれば、0.4 を2倍しておくべきです。

 

実は、ボルト外径の0.8倍というのは、ナットの高さと同じです。これが「ナット分入っていれば良いよ論」の根拠なのではないでしょうか。

 

 

 

「ボルト外径の1.5倍の長さ入っていれば良いよ」 論

 

そうすると結局、「ナット分入っていれば良いよ論」が正解なのでしょうか?そうとは言い切れません。ナットは別に、「ネジ部は絶対に破損しません」ってことを保証しているわけではありませんので。

 

そこで登場するのが「ボルト外径の1.5倍の長さ入っていれば良いよ論」です。

ボルト外径の1.5倍というのは、ナットの高さのおおよそ2倍です。要は、「最低でもナットの高さの2倍はねじ込んでおこう」という意見です。これが「1.5倍論」の根拠なのでしょう。

日本産業規格のネジの項目(JIS B 0209-1)を見てみると、「ねじ外径の0.5倍〜1.5倍を、標準的なねじ込み量だと認識してますよ」という内容になっておりますので、これが「1.5倍論」の根拠である可能性もあります。ただし注意して頂きたいのが、この規格はねじの強度とは関係ないということです。

 

 

ネジ部の強度に関してに大きな心配がない場合には、「ボルト外径の1.5倍の長さ入っていれば良いよ論」が広く使われております。

 

「1.5倍論」を使用できないのはどんなときでしょうか?例えば、その機械において主要な力を受ける場合です。これは重荷重になる場合が多い為「1.5倍論」は使用するべきではありません。ネジ部にかかる力が大きくなったり小さくなったりする繰り返し荷重がかかる場合は、ネジ部の疲労を考えなければなりませんので、「1.5倍論」は使わないほうが良いかもしれません。ネジ部の材質が弱いモノのときも「1.5倍論」は適用外となります。

 

 

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