Oリングに関する基本的な知識
Oリングのこと、どれくらい知ってる?
良く使うけどあまり詳しく調べたことのない部品代表、Oリング。 何故こんな簡単な部品で流体を密封できるのでしょうか? 単純な部品だから簡単に使えばいいのでしょうか? 『Oリングに関する基本的な知識を知っておこう』 というのが趣旨の記事です。
Contents
Oリングで密封できる仕組み
ご想像の通り、圧縮を復元しようとするOリングの反発力が隙間を遮断することで流体の密封が可能となります。
流体の圧力が上がるとOリングは片側に押し付けられてさらに変形し、Oリングの反発力は高まりシールの効果が高まります。これをOリングの自封性と言います。
さらに圧力が高まると、Oリングがむしれて破壊されシールの機能を失います。
Oリングはどれくらいの圧力まで耐えられるのか?
Oリングの最高耐圧能力は、溝構造の『すきま』とOリングの『硬さ』、それとOリング自身の『強度』に依存しております。
すきまが小さければ高い圧力まで耐えられますし、同じすきまでもOリングが硬ければ高い圧力に耐えられます。そして当然Oリング自身の強度も耐圧性能を考慮するうえで重要な要素です。
Oリングのつぶし代は最高耐圧能力とは関係がないのでしょうか?大きくつぶせば耐圧能力が上がる気がしますよね。
実は、圧力が高くなると先ほど紹介した自封性が作用する為、つぶし代を大きくしても最高耐圧能力が上がるというわけではありません。つぶし代が少なくても高圧になればOリングがつぶれるので、結局つぶし代を大きくとっているのと同じことになる ということです。ただし、低圧時にはつぶし代が重要となります。
Oリングの耐圧能力は、以下の線図より推定することができます。
例えば、硬度70で隙間が0.2[mm]の場合には、Oリングは9[MPa]まではみ出さないということがわかります。ですが、Oリングの材質自体が9[MPa]に耐えられるのかどうかということはチェックしておかなければなりません。その場合には以下の表が参考になるかもしれません。
『つぶし代』はなるべく大きい方が良いのか?
先ほど紹介しましたが、低圧時にはつぶし代が重要になります。Oリングはなるべく圧縮して使用した方が良いのでしょうか?実は、つぶし代を大きくするときには永久ひずみに注意しなくてはなりません。
永久ひずみ量というのは、Oリングを圧縮状態から解放したときに元の状態に戻らない量のことです。「使用する圧力が低圧だから、できるだけOリングをつぶして使おう」ということをやってしまうと、永久ひずみが残りやすくなり時間が経過するとシールできなくなる可能性があります。また、つぶし代を大きくとるとOリングが動くときの抵抗が増える為、Oリングが傷みやすくなります。
ではどれくらいのつぶし代を確保すればいいのかというと、Oリングメーカのカタログを見ると溝寸法とその交差が記載されているので、それを参考にして寸法を決定すればOKです。この寸法に従っておけば、Oリングの太さの10%〜30%という適切なつぶし代を確保できるようになっております。
Oリングの硬度は高い方が良いのか?
先ほどのはみ出し限界の線図をもう一度見てみましょう。この線図によると、Oリングが硬ければ硬いほど耐圧性能が良いことがわかります。
だとすると、なるべく硬いOリングを使った方が良いということなのでしょうか?実は、硬いOリングを使うと摺動抵抗が大きくなるため注意が必要です。Oリングに大きな抵抗がかかると、Oリングを痛ませることになる為です。
では、あえて柔らかいOリングを使うことはあるのでしょうか?Oリング周りの構造が弱いときに使ったりするらしいです。構造が弱くても、確実につぶし代を確保したいときに使うのでしょうが、今のところ私の経験上は選定したこともなければ見たこともありません。
Oリングの型式
メーカによって異なりますが、だいたい以下の様な感じでOリングの型式を指定します。
材質に関してはそのメーカのカタログを見れば、その特徴や硬さが書かれております。一般的な材質は『ニトリルゴム』という材質ですが、使用する流体の種類によっては他の材質を選ばないといけないこともあります。寸法規格に関しては後で紹介いたします。等級は、Oリング自身のバリとかへこみとかを規定しております。正直言うと私は等級に関して気にしたことがありませんし、発注するときにも「等級はどうしますか?」ということを聞かれたことはありません。
Oリングの寸法規格
寸法規格というのは、文字通りOリングのサイズのことです。よく使用されるのはPシリーズとGシリーズの2種類ですが、ごくたまにSシリーズが使われるときもあります。真空用の場合にはVシリーズというのもあるみたいです。
例えば、P50と書いて発注すると、Pシリーズで直径が50[mm]のモノを入手することになります。
PシリーズとGシリーズでは何が違うのでしょうか?パッキンとガスケットの違いを聞いたことありますか?パッキンというのは動く部品に使われるシールのことで、ガスケットは動かない固定された部品に使われるシールのことです。Pはパッキンを意味していて、すなわち動く部品に使うOリングということになります。Gはガスケットを意味していて、動かない部品に使うOリングということになります。結局のところPとGで何が違うのかというと、それはOリングの太さです。動く部品に細いOリングを使うと使用しているうちにOリングがねじれてしまうため、動く部品に使うOリングは太いモノを選定しなければなりません。つまり、PのOリングはGのOリングより太いということになります。
固定用の場合にPシリーズを使っても、全く問題はありません。むしろOリングは太ければ太いほうが永久ひずみが残りにくい為、Oリングの溝寸法に余裕があったり、経済的な面を気にしないのであれば、Pシリーズを使用するべきです。ちなみにSシリーズというのは、Gシリーズより細いOリングで、どうしても溝寸法が取れない場合に使用します。他にも、ねじれにつよいDリングやXリングというのもあるので、「運動用にPシリーズを使っているんだけど、どうしてもねじれてしまう」というときには選択肢のひとつになるかもしれませんね。
Oリングにキズをつけない為に重要なこと
Oリングにキズをつけない為には、まずは表面粗さが重要となります。運動用に使用するOリングの場合は当然ですが、固定用に使用する場合でも圧力が変化する場合には溝の中でOリングが動いて溝と擦れる為、Oリング周りの表面粗さには気を付けなければなりません。どういう粗さにすればいいのかは、カタログをご覧ください。表面粗さは小さいほうが良いのですが、鏡面仕上げは抵抗が大きくなる為さけるべきです。
次に、角部や隅部の加工にも注意しないといけません。この部分が角ばっていると圧力を受けたときにOリングに傷がつく為、ほんのわずかにR加工を施します。Rの寸法はカタログに載っているので、それに従って設計すべきです。
他にも、軸端の形状や穴の形状にも気を付けなければなりません。Oリングを装着する際にOリングに傷がつかないようにする為、カタログに従った寸法にするべきです。
バックアップリングの目的
バックアップリングは何のために必要なのでしょうか?Oリングのはみ出しが気になる場合には、バックアップリングがはみ出しを防ぐことが出来きます。
バックアップリングには3種類あって、一番効果が優れているのは切れ目がないエンドレスですが、切れ目がないため装着するのは結構大変です。伸ばしてOリングの溝へ装着するのですが、うまく装着できたとしてもバックアップリングが収縮するまで待たないと、穴へ挿入するときにバックアップリングが切れる恐れがあります。エンドレスのバックアップリングを取り付けるときには、予備で1個余分に購入するという人もいらっしゃいます。